私、普段は会社で営業の仕事をしており、お客さん(法人)と契約書を結ぶことが結構あります。
私の会社は規則が厳しくて(普通かもしれませんが)、相手から契約書にもらう印鑑は実印、かつ、印鑑証明と何らかの証明書(資格照明など)をもらうことを義務付けています。
いっつも、「面倒だなー、間違いないお客さんなんだから、ハンコなんて実印じゃなくてもいいじゃん」、、、などと若いころは思ってたりしたことはありましたが、ここ最近、契約上のトラブルが社内で相次いだこともあって改めて少し確認してみました。
今回は、なぜ契約を結ぶとき、実印が必要なのか、印鑑証明とか証明書類が必要なのか、少し整理してみたいと思います。
ちなみに、私は法律家ではありませんので、私なりの解釈ということでご容赦ください。
あくまで普段行っている単純と思っている仕事、単なる作業や事務と思っている業務の裏にも、少し調べると深い意味があることがありますよー、ということでしてご参考程度に見ていただけると幸いです。
契約の印鑑の効力とは
契約の成立とは?
まず、そもそもなんですが、法律上、契約が成立するためには、契約書というのは必ずしも必要なものではない、ということをご存知でしょうか?
これ、最初に聞くと「は?」と感じるかもしれませんが、民法では契約の成立条件というのは、お互いの意思が最も重要視されているんです。
Aさんが「申し込み」、それに対してBさんが「承諾」すると契約は成立するのです。
普段使っている契約書を是非よく読んでみて下さい。
よく見るとたいていの契約書は、冒頭に、、、、、「甲と乙はに、○○に関する下記の内容につき合意し本契約を締結する、、、うんぬんかんぬん」
というような文言が入っていると思います。
契約書においても、冒頭でお互いの意思を再度確認しているのです。
契約書の意味
でも、個人間のやりとりならいざしらず、(個人間でも口頭だけでは言った言わないのトラブルになりますよね!)、商慣習として口約束のみで契約のやり取りを決めるのは、危険というか後でトラブルのもとになるので、書面に条件やお互いが承諾しあった証拠を残す、これが契約書なのです。
先ほど述べた通り、契約書を作る場合においても最も重要なのは、「お互いの意思」の確認です。
意思に反した契約締結というのは、万が一トラブルが発生して法廷で争ったりした場合には無効になる恐れがあり、契約書が締結してあれば安心、ということでは決してないことを認識してく必要があると思います。
あなたが個人的に生命保険の契約とか、家を借りたり買ったりするときに、やたらとくどくど条件を説明されたり、意思確認をされたことはありませんか?
あれは、企業側からお客さんである個人に対して、契約の意思確認(条件に納得して承諾する意思をもって契約をした)をされているのですが、仕事でお客さんと契約を結ぶときも全く同じことなんです。
契約書における印鑑の意味
契約に関して規定をしている法律は、民法、民事訴訟法、商法などいくつもあってそれぞれ理解しておくべき部分があったりするので素人にはややこしいです。もっと簡潔にならないのかな、、とか思っちゃいますよね^^
民事訴訟法という法律では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」という規定があり、本人がサインした契約をもって契約が成立したものとみなされることになっています。
先ほど、契約には「意思」が最も重要と述べましたが、実務的な場面では、その「意思」を本人がサインすることで表している、という考え方と言えるでしょう。
本人やその代理人(代理人であることの証明が必要ですが)が署名した場合には、本人の意思によって契約を締結したものとみなす、ということです。
相手が個人のお客さんの場合は比較的単純にこれが可能かもしれません。目の前で署名してもらえばよいわけです。
また、後日争ったりした場合でも、筆跡鑑定よっても、間違いなく本人やその代理人が署名したことを証明することができるかもしれません。
ただ、相手が法人の場合はどうでしょうか?
法人という「器」が契約の相手の場合、お客さんであるその「法人の意思」、というものをどう確認するのかが問題になるわけです。
きちんと権限を持った人、その会社の代表権を持っている人がその会社の意思を代表して契約を結んでいるのかどうか、ということが最も重要になってくるわけです。
さらに言えば、ホントにその会社が存在するのかどうか、ハンコを押した人がその代表者なのかどうか、ということが重要になってくるわけです。
会社の存在を確認するための書類としては、資格証明(住所や名称の確認)などが使われます。
では、意思はどうでしょうか?
法人が契約書にハンコを押す場合、ゴム印などで会社の社判を押すことが多い(というかほとんどそうだと思います)と思いますが、これだと本人(法人)または、その代表者が署名したことにはなりません。
実際、会社の社判やハンコを押すのは社長じゃなかったりすることは結構多いと思います。
ただし、商法には、「記名押印をもって署名に代えることが出来る」、という規定があり、ゴム印による記名とハンコのセットで、本人が署名したことと同じ効果を持たせる、という考え方になっているのです。
契約の印鑑はなぜ実印が必要なのか
ここで、問題になるのが、「ハンコ」なのですが、タダの三文判ではその法人のハンコなのかどうかの判定ができません。
登録された実印とそれを印鑑証明で確認することで、その会社の印鑑である、ということを容易に確認することが出来るのです。
まあ、本気で偽造しようとすれば、実印や印鑑証明だって作れるのかもしれませんが、かなりハードルが高いものになりますので、一定の抑止力になりますよね。
契約のときの署名と記名の違いなど
ちなみに、言葉の確認ですが、「署名」というのは、本人が自筆で氏名を手書きする(自署)することをいいます。
これに対して、「記名」というのは、署名以外の方法で自分の氏名を表す方法で、ゴム印、パソコンでの印刷、などがこれにあたります。
また、「捺印」というのは署名と一緒に押された印影のことを指し、「押印」というのは、記名と一緒に押された押印のことを指しています。
効力の順
上記に記した通り、契約の締結的には、「署名」に「捺印」があるのが、もっとも確実とされています。その次に効力が高いのが「署名」で、その次が「記名+押印」、法的に効力が弱いとされているのが「記名」のみのものです。
「署名+捺印」>「署名のみ」>「記名+押印」>「記名のみ」←記名のみは効力がないとされています。
つまり、一般的に法人取引で行われている「記名+押印}は、「署名+捺印」より、万が一の場合の証明力としては結構弱いということが言えるため、より確実に証明力を確保しておくために、印鑑証明、資格証明などの確認書類をもらっておく、ということが言えるのではないでしょうか。権限を持った人が印鑑を押印している、ということを証明できるようにしておくことが重要なのです。
まとめ
ちょっと長くなってしまいましたが、契約を締結するときには印鑑証明などをもらう、実印で印鑑を押してもらう、など単純ではあるけど面倒なことって(お客さんに嫌がられることもありますよね)会社の規定などにはそこまで丁寧な説明が書いてなくても、裏には結構重要な理由があったりするものです。
仕事をより深く理解していくためには、ときどき立ち止まって法律やら会計やら勉強してみることは重要かと思います。
以上、少しでも参考になれば幸いです。
ありがとうございました。